航行区域について

ミニボートは、どの範囲を航行できるのだろうか? と疑問に感じたことはありませんか。いざ船を買ったものの、目的の場所まで航行できないなんてことになるとうれしくないですよね。今回は、ミニボートにおける航行区域に関して説明したいと思います。

目次

〇はじめに

〇船舶免許の種類

①一級小型船舶操縦士免許

②二級小型船舶操縦士免許

③二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許

〇ミニボートの航行区域3選

①平水区域

②限定沿海(可搬型小型船舶)

③限定沿海(可搬型小型船舶以外)

〇免許不要ボートの航行区域

〇航行区域別船舶免許表

〇おわりに

はじめに

そもそも、航行区域とは、船舶の構造や性能などによって航行できる範囲が指定された水域のことを言います。

また、仮にすべての海域を航行できる船を所有していたとしても、船舶免許の種類によっては航行不可能、ということもあります。自身の所持している船舶免許の種類と、船の性能による航行区域。この2つの兼ね合いによって、航行できる範囲が決まります。

それでは、まずはじめに船舶免許の種類から簡単に紹介していきます。

船舶免許の種類

船舶の登録長が3m以上、または出力1.5kW以上のエンジン(2馬力超)のエンジンで航行する場合には、小型船舶操縦士の免許(以下、船舶免許)が必要になります。

主に4つの種類があります。

一級小型船舶操縦士免許

二級小型船舶操縦士免許

二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許

④特殊小型船舶操縦士免許

(このうち、④は主に水上バイクの船舶免許ですので、ここでの説明は割愛します。)

一級小型船舶免許を所持していれば、当然二級の範囲を航行することが可能です。二級小型船舶免許を所持していれば、二級小型船舶(湖川小出力限定)免許の範囲を航行することが可能になります。

しかし、特殊小型船舶免許のボート(水上バイク)は一級小型船舶免許を所持していたとしても航行不可能ですので、注意が必要です。

それでは、詳しく見ていきましょう。

①一級小型船舶操縦士免許

一級小型船舶操縦士免許は、すべての海域を航行できる、航行区域に制限がない免許になります(一部例外あり)。総トン数20t未満、または長さが24m未満のプレジャーボートが対象になります。

外洋で釣りをしたい方、国際航行をしたい方は一級船舶免許がおすすめになります。

②二級小型船舶操縦士免許

二級小型船舶操縦士免許は、平水区域および海岸から5海里以内(約9km)の水域が航行可能になる免許です。対象の船は、一級船舶免許と同じになります。

二級船舶免許は、「海の普通免許」とも呼ばれ、もっとも一般的な船舶免許と言えるでしょう。沿岸や湖でのフィッシングや、様々なマリンプレイに適しており、陸から近い場所でボートを楽しむ方に適しています。海への入門ボート免許として最適ですので、迷ったらこちらの免許をとることをおすすめします。

③二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許

二級小型船舶操縦士(湖川小出力限定)免許は、湖や川および指定された海域で航行可能になる免許になります。総トン数5t未満で、エンジンの出力が15kW(約20.4馬力)未満の船が対象になります。

川や湖でのバスフィッシングを楽しみたい方にはおすすめになります。

ミニボートの航行区域3選

船舶免許の種類について紹介したので、本題の航行区域について解説していきます。

船舶ごとの航行区域は、船舶検査証書に記載されています。船舶免許の種類と船の性能、法定安全備品によって航行区域を選択することができます。ミニボートの航行区域は主3つで、大きな違いとしては

1.航行できる距離(海里)の違い

2.法定安全備品の違い

3.船を下す場所の違い

になります。詳しく見ていきましょう。

①平水区域

②限定沿海区域(可搬型小型船舶)

③限定沿海区域(可搬型小型船舶以外)

①平水区域

湖、川及び港内の水域のほかに、東京湾などの50を超える水域のことをいいます。この水域は、年間を通じて比較的穏やかなため、風や波の影響が小さい点が特徴です。

こちらはどの航行区域を選択しても航行できます。画像は、ホープ周辺の平水区域を示したものです(赤の斜線部分)。

年間を通じて比較的穏やかな平水区域ですが、当然海面が荒れることもあるため、その点には注意が必要です。

また、船が3海里までの航行区域であっても、平水区域内であれば3海里を超えて航行することができます。ただし、平水区域を超えると違反になりますので気を付けましょう。

 

 

②限定沿海区域(可搬型小型船舶)

1.沖合3海里、横に5海里(最強速力によって横は変更あり)の円状

2.救命胴衣(最大定員分)、アンカー、黒球、赤バケツ、救命浮環、ふえ、ロープ、信号紅炎or携帯電話、工具

3.どこからでも可

ミニボートの基本の航行区域であり、車でボートを運ぶための航行区域になります。航行区域の指定がない場合は、基本的にこちらになります。

船をおろした地点を基準に沖合3海里、横側は船の最高速力で2時間以内に往復できる水域で、この範囲を円状にとったものが該当する航行区域になります。

横の基準に関係する最高速力とは、JCI(日本小型船舶検査機構)が計算により算出するもので、5ノット単位になっています。カートップ可能なミニボートの場合は、ほとんどが横に5海里になりますが、船外機の馬力や船の大きさ等で当然変わってきますので、必ず確認をしましょう。

可搬型の航行区域では、どの地点からでも船をおろすことができるという利点があります。様々なところから船をおろして釣りをしたりクルージングを楽しみたい方にはおすすめの航行区域になります。また、航行区域に迷ったらこちらを選んでおき、他の航行区域のほうが都合が良さそうであれば変更する、といった形をとれば良いでしょう

③限定沿海区域(可搬型小型船舶以外)

1.①平水区域から最強速力で2時間以内に往復できる沿海区域内の水域(20海里以内)

②沖合5海里以内、横に船の最高速力で2時間以内に往復できる水域

2.①可搬型の法定備品の携帯電話を信号紅炎に(携帯電話は不可)

②可搬型と同じ法定備品

3.3つまで指定可能

可搬型と違い、こちらは船の航行できる区分けのようなものが決まっています。船をおろす場所、つまり船籍港または定係港(マリーナや船を保管する住所など)を設定して、そこを基準とした航行区域になります。

可搬型以外の航行区域は、沖合に5海里超と5海里以内の2種類あります。

5海里の場合、港などの平水区域から最強速力で2時間以内に往復できる沿海区域内の水域(20海里以内)をいいます。

5海里以内の場合、沖合5海里、横側は船の最高速力で2時間以内に往復できる水域になります。

また、船籍港などの設定は、どちらも最大3つまで設定可能となります。

限定沿海(可搬型以外)の航行区域を簡単に調べる方法を紹介します。

ボートを購入して、ボートの保管場所が自宅であるとします。(今回はホープボートの住所である福岡県北九州市門司区畑338-2を使って考えていきます)。JCIのサイトから航行区域の区分けされた表が確認できるため、この中から自分の住所や船籍港が含まれたものを選択します。ホープの住所の場合、第10号になります。その後、船の最強速力からノット数を選択すると、航行できる範囲が示された略図が表示されます。この略図は、5海里以内・5ノットを選択しています。

正しい航行区域を知るためには、JCIに確認することが一番です。あくまで参考程度に考えてください。

また、5海里超の場合は、一級の船舶免許が必要になるため、注意が必要です。

免許不要ボートの航行区域

最後に、免許不要ボート(登録長3m未満、推進機関の出力1.5kW未満)、通称ミニボートの航行区域について説明します。

結論からいうと、ミニボートに航行区域はありません。検査自体がないため、航行区域の制限ができないからです。

しかし、ミニボートはその性能上、沖にまで行くことは絶対にお勧めしません。

原則1㎞以内、よりわかりやすく言えば、何かあった時に手漕ぎで陸までもどれる距離を航行するものだと考えてください。波に関しても、波高20㎝、風速の目安としては4m/s以内が、安全に航行できる目安となります。海面に白波が見えたときは、すでに50cm~100cmの波高になっています。

海で遊ぶ準備をして、少しでも遊びたいという気持ちは十分理解できますが、安全第一で慢心しないように気を付けましょう。

おわりに

今回は、船舶免許の種類と航行区域について解説しました。ミニボートの特徴は、好きなところから船を下すことができる点であるため、可搬型が中心になると思います。ただ、RAIJINなどの16・17ftクラスの船の場合はもう少し沖に出たい場合もあると思うので、その場合は可搬型以外を選択すればよいでしょう。他にも、沿岸区域などもありますが、ホープの船は限定沿海区域の可搬型・可搬型以外の航行区域が基本となるので、今回は省略しました。詳しくはJCIのHPからご覧ください。

繰り返しにはなりますが、自身の船がどれくらいの航行区域をとれるのかに関しては、JCIに確認することが一番です。今回の解説は参考程度にお願いします。

航行できる範囲を正しく把握して、楽しく快適なボートライフを送りましょう!

※参考画像(JCI)